「SA7」Mission:Spring Pink
こんにちは。プチレーヴ運営局です。
『電撃Girl's Style』2015年4月10日発売号に掲載していただいた
「SA7」のSS「Mission:Spring Pink」を公開いたします。
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「Mission:Spring Pink」
登場人物:近衛累(エル)&アーサー
「そっか、もう4月か……」
街の中を流れる小さな川は、キラキラと春の陽を反射している。
穏やかな日曜の昼。警察官の僕は、担当地区のパトロール中、先週のミッションで“彼女”が「桜が咲いたらお花見したいですね」と話していたことをぼんやりと思い返していた。
「……あれ?」
川沿いの歩道を歩いていると、小さな子どもたちが川沿いに立ち並ぶ桜の木を見ながら、何かヒソヒソと話していることに気づいた。
「こんにちは」
「あ、おまわりさんだ! こんにちは!」
「どうかしたんですか?」
「あのね、さっきからあの人ずーっとあそこに立ってるんだ」
「ずっと?」
「うん、ずーっと上見てる!」
少年が指差す方を見ると、髪の長い青年が立っている。外国人のようだ。
「フシンシャかもしれないよ! キンジョの人じゃないし。あ! オレ、たまにコンビニでもそれっぽいヤツ見るもん!」
確かに、ただの観光客なら問題はないのだが。
「では、僕がちょっとお話してきますね。あ、皆さんはあまり水辺に近づきすぎないようにしてくださいね」
「はーい」
子どもたちに声を掛けてから、僕は青年に近づく。
「Excuse me,」
話しかけると、青年は振り向いた。
プラチナブロンドの長い髪と、綺麗だけど冷たい印象を受ける顔立ちは人形みたいだ。
「……日本語は理解出来る」
「あ、そうなんですか。えっと、ここで何をしていたんですか? ずっと立たれていたようですけど……」
僕の問いに対して、青年はニコリともせずに「サクラの花を、見ていた」とだけ答え、また上を見上げた。
「あぁ、桜……確かに、綺麗ですからね」
「“キレイ”?」
「はい。綺麗ですよね。僕の知り合いもお花見したいって言ってました」
柔らかで薄いピンクは、春の訪れを感じさせ……なんとなく彼女を思い出させる。
「これが……“キレイ”、なのか」
「え?」
「……満開のサクラはキレイだと、言われた」
静かな声で青年がそう答えた時、ぶわっと強い風が吹き、僕は帽子を押さえた。
「わっ!」
数秒、視界が自分の腕と桜吹雪で遮られる。
「……あれ?」
やっと風がおさまったとき、僕の目の前の青年はいなくなっていた。
「彼は……?」
ぐるりと辺りを見回してももう彼の姿はなく、僕は不審に思いながらも、街のパトロールを続けることにした。
- 2019.04.02 Tuesday
- SA7
- 13:00
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- by プチレーヴ